【石川県】久麻加夫都阿良加志比古神社(熊甲神社)

久麻加夫都阿良加志比古神社(熊甲神社)の鳥居

石川県七尾市|お熊甲祭の拠点

2025年9月17日、秋の気配が漂う中、私は中島お祭り資料館・伝承館を後にして、すぐ近くに佇む久麻加夫都阿良加志比古神社(くまかぶとあらかしひこじんじゃ)へと足を踏み入れた。

資料館の受付の方の温かな声が耳に残る。
「せっかくですから、お熊甲祭の神社にもぜひお参りしてくださいね」。
その言葉に導かれるように、私はこの神聖な場所へと向かった。

車を道路の向かい側、角地の駐車スペースに停め、境内へと進む。
空はどんよりと曇り、雨が今にも落ちてきそうな静けさに包まれていた。
境内には、令和6年の能登半島地震の爪痕がまだ生々しく残り、修理業者の車両がひっそりと停まっていた。
あの年、お熊甲祭は中止になったと聞く。
神社の空気には、どこかその記憶を湛えたような重みが漂っていた。

本殿へと向かうと、立派な身なりの男性――おそらく宮司さんだろう――が、雨に備えて戸締まりをしていた。御本社の扉が閉じられたため、私は薬師杜の鈴をガラガラと鳴らし、心を込めて参拝した。
鈴の音が静かな境内を響き、まるで神様に私の小さな祈りが届いたかのように感じられた。

ふと辺りを見渡すと、境内には横に広がる階段のようなスペースが目に入った。
お熊甲祭の日には、この段々に多くの人が腰掛け、笑顔で祭りの様子を見つめるのだろう。
くじ引き――「しらい」と呼ばれる神事がここで行われると聞き、その光景を想像すると胸が高鳴った。
色とりどりの着物、笑い声、太鼓の響き。
きっとこの静かな神社は、祭りの日には生き生きとしたエネルギーで満ち溢れるに違いない。

境内をそっと歩き回ると、「祭具庫」と書かれた建物が目に留まった。
つい先ほど資料館で見た、華やかな祭りの道具たちがここに眠っているのだと思うと、まるで神聖な宝物庫に足を踏み入れたような感覚に襲われた。
祭りの魂が、この建物の中で静かに息づいているようだった。

そして、境内の片隅に立つ御神木。その堂々とした姿に目を奪われた。
よく見ると、一部の枝は人工的に支えられている。能登半島地震の影響か、それとも長寿を支えるためのものか。
どちらにせよ、この木は長い年月をこの地で見守り続けてきたのだろう。

ふと視線を上げると、新しい枝が力強く芽吹いているのが見えた。その生命力に、胸の奥が熱くなった。どんな試練があっても、未来へと伸びていく力強さ。
この御神木は、まるで神社の魂そのもののように感じられた。

雨がぽつぽつと降り出しそうな空の下、神社は静かだった。
だが、数日後に迫るお熊甲祭に向けて、どこかひそやかな準備の鼓動が感じられた。
神域全体が、祭りの日を待ちわびているかのようだった。
私は最後に御神木に一礼し、静かな感動を胸にこの場所を後にした。

LOCATION

住所〒929-2225 石川県七尾市中島町宮前ホ68-1-1
TEL0767660135
久麻加夫都阿良加志比古神社(熊甲神社)の鳥居

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