石川県能美市|ちょっと怖いトンネル
能美市と白山市の境、手取川沿いをあてもなく走っていたときのこと。
天狗橋から程近いその場所に、それは突然あらわれた。
……「和佐谷林道トンネル(北側)」。
視界に飛び込んできた瞬間、脳裏に警鐘が鳴り響き、足は自然とブレーキを踏み込んでいた。異様なまでの存在感。トンネルの開口部を覆い尽くすようにうごめく雑草や不自然な草木、そしてその奥に広がる、光を一切拒絶するような底なしの闇。
すぐ傍らの路上に車を止め、吸い寄せられるように外へ出た。
静寂の中、トンネルの洞口へと歩み寄る。中を覗き込むと、肌が粟立つような冷気が吹き抜けた。
どこまでも深い暗黒。だが、視線を凝らしたその遥か奥に、ひとつだけ「何か」が不気味に薄ぼんやりと光っていた。そして見える範囲の壁面は、まるで異界へ誘うかのように滑らかに曲がりくねっている。

車1台が通れる幅はある。だが、そこから発せられる強烈な拒絶のオーラが、一歩を踏み出すことを踏みとどまらせる。
……そのときだった。
トンネルの入り口の脇、暗がりの中に「それ」があることに気づいた。
――ポツンと置かれた、一脚の椅子。
なぜ、こんな場所に椅子があるのか?

誰かがここに座っていたのだろうか。もし作業員や警備員だとしたら、なぜ今誰もいないのか。あるいは……夜な夜な「何か」がそこに腰掛け、トンネルに入る者をじっと見つめているのだろうか。思考が闇に呑まれ、背筋に冷や汗が伝う。
引き返すべきだという本能の叫びを押し殺し、私は車へと戻った。ギアを入れ、アクセルを踏み込む。覚悟を決め、黒々とした洞穴の中へと侵入した。
ヘッドライトの光が照らし出したのは、ゴツゴツと生々しく削り取られた異様な岩肌。そして、奥で不気味に光っていたものの正体――それは、暗闇に浮かび上がるカーブミラーだった。

幸いにもトンネルの距離は短く、すぐに眩しい光とともに反対側へと抜け出ることができた。

一瞬の静寂と狂気が交錯した、あの空間。 もしあなたもあの椅子を目にすることがあっても……決して、長居はしないほうがいい。
にゃーこ気をつけてね!
LOCATION
| 住所 | 〒923-1207 石川県能美市 |
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